公益財団法人 日本少年野球連盟 東日本ブロック

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2022.11.1

創刊150周年スポーツ報知アーカイブ 「こんな時こそしっかりルールを学ぼう」 =おわり=

2021年1月27日付ボーイズリーグ特集から 「塁審が打球に当たった場合」
 コロナ禍で在宅時間が長くなった子どもたちにルールの再確認を促す連載企画。実際にあった例を問題にして、東日本ブロックの審判が答える。最終回は「審判に打球が当たったら」。

【問題】プロ野球で実際に起こった例です。2死満塁で打席には4番の強打者。ツーアウトですから、当然各内野手は深めの守備位置にいました。ところが、強い打球がダイヤモンドの内側、二塁ベースから少し投手板寄りにいた塁審に当たり、はじけたボールはセンター方向に転がりました。三塁走者に続いて二塁走者も生還。しかし、その前に球審は「ボールデッド」を宣告し、1点しか認めませんでした。攻撃側監督の猛抗議も受け付けられません。「打者に一塁を与え、一、二塁の走者をそれぞれ進塁させた2死満塁から試合再開」となりました。判定は正しかったのでしょうか?

【回答】判定は間違っていません。2015年にNPBセ・パ交流戦であったケースですが、当時このルールを知らない人が多くて話題になりました。公認野球規則5・06「走者」の項の「ボールデッド」で、ボールデッドになる場合の一つとして「内野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者または審判員に触れた場合、あるいは内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判員に触れた場合」とあります。さらに続けて「打者が走者となったために、塁を明け渡す義務が生じた各走者は進む」とも記されています。
 つまり、このケースでは内野手より前にいた塁審を打球が直撃したので、その時点でボールデッド。当たったのは審判ですから、誰もアウトにはなりません。「審判の守備妨害」となり、打者には安打として一塁が与えられ、打者走者に押し出される走者はそれぞれ進塁が認められるのです。2死満塁ですから、1点が入ってなお2死満塁で再開されます。
 それでは、内野手より後方にいた審判に当たった場合はどうなるでしょうか? 1982年日本シリーズでのあるシーン。2死二塁からの一打は一塁手と一塁ベースの間を抜いた長打性の当たりでしたが塁審を直撃し、二塁手のいる方向へ転がりました。その結果、本塁を突こうとした二塁走者かえることができず、そのうえ三塁へ戻ろうとしましたが二塁手からの送球でタッチアウト。このケースは「内野手に触れずに通過したフェアボール」ですから審判に当たってもボールデッドにならず、打球が内野方向に転がったことで守備側に運が向きました。
 ちなみにその塁審の試合後の発言から「審判は(打球が当たってもそのままプレーが続く)石ころ」という有名な言葉が生まれました。そこから「審判は石ころと同じで、フェアゾーンならどこで打球が当たってもボールインプレー(プレーが続くこと)」という誤解が広がったようです。(東日本ブロック審判委員会)=おわり=
【追記】新型コロナウイルス感染拡大によりボーイズリーグの活動が大幅に制限されていた時期に「時間のある時こそ野球ルールの再確認をすべき」と考えて東日本ブロックの審判さんに協力をいただいて連載しました。「打順間違いに気付いた時」「インフィールドフライについて」など、一度は覚えたはずなのに時間の経過とともに忘れてしまいがちなルールを実際にあったケースを例にして確認しました。コロナ禍もようやく出口が見えてきたようです。今度は「今まで通り普通に野球ができることへの感謝の気持ち」を再確認したいですね。(報知新聞社・芝野栄一)