公益財団法人 日本少年野球連盟 東日本ブロック

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2022.8.4

創刊150周年スポーツ報知アーカイブ 「こんな時こそしっかりルールを学ぼう」(4)

2021年1月13日付ボーイズリーグ特集から 「打順間違い」

子どもが野球に興味を持つ機会が減っている。地上波でのプロ野球中継が減り、野球で遊ぼうと思ってもキャッチボールですら禁止の公園がほとんど。“楽しみながら”ルールを覚えることがなくなった。学童チームに入ってから短期間でルールを頭に詰め込むケースが多いため、試合では野球規則の勉強不足による“もったいないプレー”が目立つ。コロナ禍で在宅時間が増えている今こそ指導者、選手ともに野球のルールを再確認したいところだ。そこで実際にあったケースを問題にして、東日本ブロックの審判が答えるルール入門を連載。第1回は「打順間違い」。(構成・芝野栄一)

【問題】ある試合でのこと。2回に無死二塁のチャンスを迎えて6番・A君の打順でしたが、間違って9番・B君が打席に立ちました。最近スランプのB君は、この試合から打順が下がりましたが、自分だけでなく打順を決めた監督、コーチもうっかり忘れていたようです。それに気付いた相手チームの監督は、投手が初球を投じた直後に「打順が違う。1球投げた後だから打者はアウトだ」と球審にアピール。さて、認められるでしょうか?

【回答】打者はアウトにはなりません。この場合は無死二塁のまま、本来打席に立つべきA君がカウントを引き継いで試合再開となります。公認野球規則には6・00「反則行為」の「打順の誤り」として「不正位打者(9番・B君)の打撃完了前ならば、正位打者(6番・A君)は、不正位打者が得た(中略)カウントを受け継いで、これに代わって打撃につくことはさしつかえない」とあります。攻撃側は相手チームの指摘で誤りに気付けば、正位打者に戻せばいいのです。

では、打順を間違ったB君の打撃完了後のアピールならどうなるでしょうか? 守備側投手が次の一球(けん制球を含む)を投げる前であれば、球審は「正位打者(A君)にアウトを宣告」し、「不正位打者(B君)の打球によるものか、または不正位打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に進んだことに起因したすべての進塁および得点を無効とする」と規則にあります。たとえばB君が2ランホームランを打っても直後にアピールがあれば無効となり、間違えられたA君がアウト。走者は二塁に戻され、1死二塁からA君の次の7番打者が打席に入って再開されます。つまり守備側は打順の誤りに気付けば、すぐにアピールせずに不正位打者の打撃完了まで待てばいいのです。次の打者が打席に入る前にアピールすればヒットを打たれても無効にでき、進んだ走者を戻してアウトを1つ増やせます。逆に併殺など好都合な結果であれば、そのまま流して試合を進めればいいのです。

ところでアピールせずに不正位打者の打撃が正当化されれば、打順は不正位打者の次になります。このケースの場合、打順を6番と間違えた9番・B君の打撃がアピールがなく正当化されれば、次は1番打者が正位打者として打席に入ることになります。スコアブックは妙なものになりそうですね。(東日本ブロック審判委員会)

【追記】新型コロナウイルス感染拡大のため2020年4月に初めて緊急事態宣言が発出されました。ボーイズリーグも活動休止となり取材活動が制限されたため東日本ブロックの審判さんと相談して「こんな時こそルールを学ぼう」の連載をスタートさせました。その後宣言が解けて全3回で終了したつもりだったのですが、好評をいただいたので年始恒例の連載企画として再開しました。問題は取材中に実際目にしたシーンですが、その時の審判さんはルールを間違えて打者をアウトにしてしまいましたし、そういう私も間違いに気づきませんでした。それだけ打順間違いというのはめったにないことですが、知っていればアウトを一つ損しないですみます。